「日菜子ちゃんはいない。」






吉田さんから発せられた言葉の意味を、俺は理解することができない。


「日菜子ちゃん、いないんだよ。」


「いないって…どういうことですか?」


「現場のどこにも日菜子ちゃんの姿は見当たらなかった。」


「そんなことって…」


「もしかしたら、爆発で姿が消えるくらいに…とも考えたけど…」


考えたくなかった。


雪見さんは俺を庇って…消えた。


「でもさ、俺見たんだよ。日菜子ちゃんがアキハくんを抱えて飛んでる姿。」


「飛んでる?」


「そう。アキハくんと一緒に爆発の瞬間、ステージから高く飛んだんだ。」


「……」


爆風で飛んだのか…?


俺が雪見さんと飛んでいた記憶はこれが原因だったのか。


「だからアキハくんと同じく雪見さんも爆発の影響を大きく受けることは避けたはずなんだよ。それなのに姿がないって…」


「……」


「でもよかったよ、とりあえず。アキハくんも無事でさー。」


「そうですね。」