部屋には俺と露木さんが二人だけ残った。


しばらく沈黙が流れる。


「あの…」


露木さんが沈黙を破った。


「ありがとう、アキハくん。」


「え?」


「今日、楽しかった。」


「そっか、よかったよ。」


「私…生きてて良かった。」


露木さんは自分に言い聞かせるようにそう言った。


「アキハ君に許してもらおうなんて、そんな都合のいいことは思ってない。私のしたことは許されることじゃないし、一生背負わなきゃいけないものだと思う。」


露木さんが真っ直ぐに俺を見つめた。








「死にたいなんて言ってごめん。」








「露木さん…」


「死ぬことで逃げちゃだめだよね。」


彼女の目は、決意に満ちていた。


「一緒に生きようって言ってくれて嬉しかった。」


そう言うと、露木さんは立ち上がった。


「私もそろそろ帰るね。」


俺に背を向けて、真っ白なマフラーを巻き、カバンを持つ露木さん。


「じゃあね。」


彼女は少し振り返りそう言うと、靴を履き玄関のドアノブに手を掛けた。