「猫たちが驚かないよう、派手な音を出さないようにしてるんです。」


辻井さんが得意そうに解説をする。







南さんの歌声は、マイクなしとは思えない程綺麗に通り、観客はみな、静かに聴き入っていた。


猫たちも南さんの足元で彼女の歌を聴いている。


南さんが歌い終えると、ステージは拍手でいっぱいになった。








「アキハ君、ありがとう。」


隣の露木さんが笑った。


今まで見たことのない笑顔だった。


「俺だけじゃないよ、絹代さんや南さんたち、それに猫たちみんなが露木さんを助けたんだよ。」


「そうだね。」


露木さんはポツリと呟くように言った。








「みんな、ありがとう。」