フジヤマの運転する車は、私の住む田舎町へと向かう。
観光って言っても、田舎だから別に何もないんだよなぁ……。
あ、でも。
砂浜は結構有名かも?
夏のこの時期は県外から海水浴に来る人も多く、よくテレビで取り上げられている。
広いビーチ、たくさんの出店、人混み……のため、私はほとんど行ったことがないけど……。
最後に行ったのは、小学校3年生くらいだろうか?
その頃から段々と人見知りするようになり……人の多いところは避けるようになってきていた。
だけど今は夕方だし、泳ぐ人は少ないはず。 ということで、フジヤマとともに海へとやってきた。
……けど……、
「お、カップルだらけ。 サクラはやっぱり俺とラブラブしたいのか?」
……車を降りてビーチに向かったら、カップルばっかり!!
ですよね、夕方や夜の浜辺は、ロマンチックですもんね……。
「……ていうかフジヤマ。 その帽子とサングラス、必要?」
夏の日照時間は長く、6時半近いけどまだ明るい。
それでも、もう間もなく暗くなるだろう。
なのに麦わら帽子とサングラスって……。
「『俺』と言ったら麦わら帽子とサングラスだろう?」
「……何それ、聞いたことない」
「俺の地元でこの格好をしてみろ、『あ、フジヤマさんだっ!!』って言ってみんなが集まってくるぞ? 俺は有名人だぞ?」
「いやいやいや、それ微妙だからっ」
嘘か本当かはわからないけれど、その状況がなんとなく想像出来てしまう……。
有名人っていうか、ただの変なオッサンだ……。
「……とりあえず、サングラスは外そうよ」
「だからぁ、これが俺……うわっ、なんか踏んだっ!! なんかのフンだっ!!」
「……」
「いや冗談だしっ!! つーか今のギャグわかったか? 『踏んだ』と『フンだ』だぞ?」
「あー、はいはい、わかってるわかってる」
やっぱり、変な人だなぁ……。