ブラッドサースティ・キラー

 鏡にうつった俺は笑う。それは、俺自身、笑っていることを意味していた。

 “僕”を演じていた時、時々聴こえていた殺人鬼の声は、全部独り言。

 大地が死ぬ前、独り言を吐き続ける俺を見て不思議そうな顔をしていたことを思い出す。

 なかなか傑作だったなぁ。

 最近になって、頻繁にもとの殺人鬼としての人格が表に出るようになったのは、演じることが限界だったからだろう。

 もう、“僕”を演じる必要もないだろう。

 もう、“殺人鬼”としての自分を押し殺す必要もないだろう。


「そうだろう?涼紀」


 教室の隅の方に立っている那ヶ真涼紀は、ちらりとこちらを向いた。


「やっと目覚めたか。なかなか大変だったんだぞ、お前が平凡な学生を演じている間」

「そいつァ、悪かった」