ブラッドサースティ・キラー

 あーあ、鼻がかみすぎて痛いや。

 きっと、今の顔、ぐちゃぐちゃだよね……。

 情けない顔をしてしまっているんだろうな。

 でも、泣きたい時は思い切り泣いた方がいいんだろうし、こうでもしないと精神的にも保てとうにないから……。

 だから、許してね。


「なっさけねー」

「えっ?」

「……え?」


 部屋の中で聴こえた殺人鬼の声に、僕の思考は停止した。


 ――今、殺人鬼が、この部屋の中にいる……?


「ほんっと、なっさけねー」

「おい?」

「家族殺したぐらいでぴーぴー泣くなよなァ」

「うるさい!おい、殺人鬼!家族を殺された悲しみなんて分からないくせに、“ぐらいで”とか言うな!」


 部屋を見渡しながら叫ぶけれど、姿は見当たらない。

 そもそも、ここは大地の“家の中”なのだから、殺人鬼がいるわけが……。