「はい、そうですけど…
私に何か用ですか?」


ニコッと笑い、
おじさんに聞くと、
おじさんはゴソゴソと懐をあさり出した。


「?」


何だろう?と見ていると、
おじさんが差し出してきたのは、
一枚の書状だった。


「お主に人斬りの依頼をしたい。
その書状にかいてある人を斬ってもらいたい。」


書状を渡してきたその手は、
微かに震えていた。


多分、
さっきの光景を見たんだと思う。


…だったら、


「依頼は受ける事は出来ますけど…
私の正体を知ったんなら、おじさんを殺さなきゃいけないかもですよ?」


それでもいいんですか?
と、私は聞いた。


妖怪だって正体がばれたら、
私の仕事は無くなっちゃう。


私が人を殺すどころか、
私が人に殺されちゃうかもしれない。


お父さんとお母さんは、私が幼い時、
大怪我を負って瀕死の私を
命をかけて守ってくれた。


生かしてくれたんだ。


だから、
私は死ぬわけにはいかないの!


まぁ、妖怪だから寿命は長いし、
ちょっとの怪我だったらすぐ治るし、
そう簡単には死なないんだけどね?


じっとおじさんの目を見て、
おじさんの答えを待つ。


すると、意を決したのか、
おじさんは、


「…ああ。その書状に書いてある奴らを必ず殺してくれるならば、俺は死んだって構わない。己の志の為に生きて死ぬんだ。悔いはない。」


強い意思を持った目で
私の目をまっすぐ見て言ったんだ。


「…へぇ〜…」


私は少し考えて、
またニコッと微笑んだ。


「分かりました!
それだけの覚悟をするのなら、
私も期待に答えないとですね!


望月鈴、
人斬りお鈴の名にかけて、
その依頼、お受けいたします!」


私が胸を張って答えると、
おじさんは


「それでは…よろしく頼む。」


そう深々と頭を下げて、
暗闇の中へと消えていった。