恋を知らない人魚姫。


いつもなら喜んで出るはずの電話。

わざと無視したのは、彼にあんなことを言われた直後だったから。


そんなことも、あたしの感情も知らない愛海は、

「あのね……」

俯き気味に口を開き、ほんのり頬を赤く染める。


「昨日の放課後なんだけどね、実はたっくんと一緒にいたの」

恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに告げられた事実は、昨日その本人に教えられたこと。


知ってる……知ってるよ。

心の中で思いながらも、口では「へぇ……」と当たり障りない返事をする。

話の内容は予想通り。
こういうことだって、何となく分かっていた。

だから……。


「何か進展とかあった?」

あたしは微笑を浮かべ、少愛海に問いかける。

別に聞きたくなんかないけれど、何も言わないわけにもいかなくて。