「嫌だったかな……」

心配そうに顔を覗き込んで来た彼女に、

「ううんっ!」

あたしは慌てて首を振った。


自分自身の行動に、自分がびっくりしたのを覚えてる。

だって、「友達になって」なんてそんな言葉、普段のあたしなら絶対に信じないのに。

何か裏があるんじゃないか……って、疑うのに。


「ホントっ!? 嬉しい!ありがとうっ!」

彼女はあたしの手を取ると、

「これから愛海って読んで!海憂ちゃん」

本当に嬉しそうな笑顔をあたしに向けた。

海憂ちゃん……そう呼ばれるのは、いつぶりだろう。

慣れない呼ばれ方。耳の裏がかゆくなるような感じ。

「……海憂でいいよ」

あたしが小さく言うと、彼女はまたにこっと笑って。


どうしてかな……。

あたしもこの子と友達になりたいと、思ってしまっていた。




ありがちな話だけど、これが愛海との出逢い。

だけど、あたしには特別だった。