そして、
「あたしもね、海が付くの!」
彼女はとても嬉しそうに言った。
「え……」
「名前!名前に海が付くんだ!」
戸惑いの声を漏らしたあたしに、“見て”とばかりに名簿を指差す彼女。
促されるままにそれに目を向けると、
【天恭 愛海】
と、書かれていた。
「てんきょう……まなみ?」
「ううん。まなみじゃなくて、そのままあいみって読むの!」
「そうなんだ……」
反応の仕方が分からずに、とりあえず打った相づち。
すると、
「ね、もし良かったら友達になって?」
にっこりと笑ったまま、かけられた言葉。
あたしは驚いて、目を見開いた。
「友達……?」
「うん。教室に入って月城さんを見た時、すごく綺麗な人だと思ったの。この人と友達になれたら嬉しいなって思ってたら、後ろの席になれて……」
彼女は一度目線を机の上の名簿に落とし、
「名前に同じ“海”って入ってるの知ったら、ますます友達になりたいと思っちゃった」
少しはにかんだ彼女の表情は、同性のあたしからしてもすごく可愛くて。
あたしとはまるで別の人……。



