分かってる。
分かってるから、もうやめて。
これ以上聞きたくない。
「……もう帰っていいでしょ」
感情を堪えて絞り出した声は、彼にも伝わってしまうくらいに震えていた。
だけど、そんなのどうでもいい。
とにかくこの人の傍から離れたくて、あたしは返事も聞かずに背を向けた。
足早に進んで、扉に手をかけようとした時、
「そういえば、愛ちゃんにストラップ渡したんだ?」
追いうちをかけるように、櫻井くんの声が響いた。
一瞬、思わず足を止めそうになる。
だけど、
「愛ちゃん、すごく喜んでたよ」
続けられた言葉に、あたしは図書室を飛び出した。
……全部、失敗。
ストラップを使った、彼への小さな復讐も。
彼の目的を聞き出すことも。
全部、失敗に終わった。
代わりにズタズタになった、あたしの心。
『相手の幸せとか考えてないじゃん』
一番痛い所をえぐられた――。



