恋を知らない人魚姫。


「そもそもさ、好きって言ってんのに、何でふざけてるって思うわけ?」

櫻井くんが更に問いかける。

「それは、あなたの態度がっ……」

いつもいつも、あたしに対する嫌がらせばかりで、好きなようには到底思えない。

だからだよ……って、伝えようとしたのに。


「でも俺の態度のこと言うんなら、月城さんこそ愛ちゃんのこと好きじゃないよね?」

「は……?」

「だってさ、相手の幸せとか考えてないじゃん」

「っ……!」

笑顔でさらりと言われた言葉。

それは、あたしの心に鋭く突き刺さる。


「そんなこと……」

ないって言いたい。
だけど、言えない。

バツが悪くて、自然と一歩後ずさるあたしを、

「ね、月城さん」

彼の声が呼び止める。


「好きってどういうこと? 相手を自分のものにするなら、どんな手でも使うって、そういうことじゃないの?」

「っ、やめてよっ!」


彼の声に、あたしは耳を塞いだ。