恋を知らない人魚姫。



「月城さんのことが好きだから」


「……」

見えない何かで頭を叩かれた感じ。

彼と視線を交らせたまま、あたしの中の時間は一瞬止まる。


あたしのことが……好き?


「ふっ!ふざけないでよっ!」

櫻井くんの発言を理解するなり、張り上げた声。

それは思いの他大きくて、さすがの彼も驚いたのか、目を丸くする。

それでも、まだあたしは同じくらいの勢いで、

「ちゃんと答えるって約束したじゃない!」

櫻井くんをまくしたてる。

だって、ちゃんと答えるって約束したのに。

これを聞くために、今日は来たのに。


「俺はちゃんと答えたよ。月城さんのことが好きなの」

またそうやって適当なことを……。

あたしは眉間にしわを寄せる。すると、

「じゃあ逆に、月城さんは何て言って欲しかったわけ?何て言ったら納得する?
教えてくれたらそれ、言ってあげるよ」

「なっ……」

そんな意味じゃない……って思いながらも、今のあたしの態度はそういうことだ。

何も言い返せなくて口ごもるあたしに、