そして吐き出すのは、流行りのバラード曲の穏やかなメロディー。


途中ふと肩の方を見ると、愛海は静かな寝息を立てて眠っていた。

邪魔はすまいと、口を閉じる。

そして、

“だいすき”

その言葉を、頭の中で繰り返す。

嬉しくて……。

だけど、とても残酷だ。


「あたしも愛海が好きだよ」



同じ“好き”なのに、


あなたの“好き”とは違う気持ち。





それは溶けるような青空が広がる、高校3年の初夏。



あたしはたったひとりの友達に、


恋をしていた――。