「海憂、1時間だけ授業サボらない?」
ドキッ……。
甘えた声と一緒に、愛海の頭があたしの肩に乗しかかった。
「何で?」
「眠くなっちゃったから」
さっきまで「早く食べないと時間がない」って急いでいたくせに、いざ食べたら眠くなったらしい。
「……いいよ」
苦笑しながらも、あたしが“ダメ”なんて言うわけなかった。
あたしは、誰よりも愛海と一緒にいたいと思っているのだから。
「本当? 海憂だいすき」
睡魔のせいで、トロンとした愛海の声。
「……大好き?」
「うん、海憂大好きだよ」
別に特別な意味じゃない、“大好き”という友達の言葉。
だけど、あたしには――。
ツンツン。
長袖のブラウス。
愛海は頭を乗せている側の、二の腕部分を軽く引っ張った。
「ねぇ……歌って。子守唄の代わり」
「仕方ないなぁ」
あたしは雲ひとつない青空を見上げ、大きく空気を吸った。



