玄関からすぐのトイレの前の手洗い場。
みんなまずは教室へと上がるから、ここを利用する生徒はあまりいない。
あたしは愛海のカバンを持って、愛海を待ちながら鏡に自分の顔を映した。
すると、自分でも驚くくらいに酷い顔。
これじゃあ体調が良くないと言った、あたしを疑わなかったのも無理はない。
思いながら、表情を解そうと頬に片手を伸ばす。
今朝、彼に会わなくて良かった。
もし会っていたら、絶対愛海に変に思われたと思う。
嘘をつくことに慣れ始めたあたしだけど、それでも顔に出るくらい罪悪感を感じていて。
彼を目の前にして、上手く取り繕う余裕なんてとてもなかった。
精神的にかなり無理をしてる。
それでも……こうして無理をしてでも、嘘を塗り固めていくの?
自分の心に問いかけるよう、にじっと鏡を見ていると、
「待たせちゃってごめんね!」
スリッパの音をパタパタと立て、愛海が戻ってきた。



