ドクンッと心が一度跳ねる。

何で……。

恐る恐る目を向けると、あたしの心の声が聞こえたみたいに、

「だって今日、あたしの顔見てくれないんだもん」

愛海は言いながら、唇を尖らせた。


「そんなことないよ、気のせいだよ。ほらあたし、夏って苦手だし」

ふと思い出した言い訳。
前にも言ったそれを口にすると、

「えっ、気分悪いの?大丈夫?」

拗ねたような表情が一変、心配そうなものへ。


疑うことを知らない表情に、胸がチクンと痛む。

だけど、

「大丈夫。それより話聞けてなくてごめんね」

あたしは嘘を撤回することなく、謝った。

すると愛海は首を横に振りながら、袖を掴んだ手を離して。

「ううんっ、あたしの方こそごめん。早く学校行こ!」

今度はあたしの手を握るように掴んだ。