櫻井くんとふたりで出かけた翌日、月曜日の朝。

「で、その後なんだけどね」

あたしの隣には、昨日の出来事を楽しそうに話す愛海。

そこから少し目線をずらして映るのは、すれ違いざまにチラリとこっちを見る同級生の女子達。

あたしを取り巻く環境は、いつもと何ら変わらない……ように見えるけど、

一週間前とは何もかもが違う。


「ね、海憂、聞いてる?」

いきなりぐんっと重くなった体。
見ると、愛海が白いブラウスの袖を掴んでいた。

「あっ、えと……ごめん」

「海憂がボーっとしてるなんて珍しい。何かあったの?」

当たり前のように、愛海は心配する言葉をかけてくれる。

その気持ちは嬉しい。すごく嬉しいけど……。

「ううん。別に何にもないよ?」

あたしは軽く笑って、また歩き出そうとした。

何があったかなんて、愛海には言えない。
愛海にだけは、絶対に。

だけど、

「っ!」

一歩前に足を出したものの、動けない体。

「何もなくないでしょ?」

愛海はあたしの袖を掴んだまま言った。