恋を知らない人魚姫。


どうすればいいのか、分からなくなった。

馬鹿にするように笑われるのは想像出来ていても、謝られるなんて予想外。

これも、あたしをからかってるうちのひとつ……?


ざわざわと波立つ胸の中。

考えても考えても、分からなくて。
やっぱり櫻井くんの手のひらの上で、踊らされているような気がして、

あたしはちょうど背を向けていた彼から逃げるように、売店を飛び出した。



水族館を出て、歩いてきた道をひとり引き返す。

こんなことをして……明日どうなるのか。
考えると怖いけど、

でも、今日の彼と一緒にいるのも怖かった。



最寄駅に着いて、見上げて見る時刻表。

それは、あたしをがっかりさせるものだった。


時刻表よりも低い位置に壁かけられた時計。

指された時刻に一番近い電車は……3分前。

あたしが到着する少し前に、電車は出て行ってしまっていて、次は20分後。

そんなに時間があったら、追いつかれてしまう……。

手にギュッと力が入るほどの不安は、次の瞬間には現実となった。