恋を知らない人魚姫。


「……」

悔しいけど、図星。

このストラップを見て思ったことは、愛海と……って、それだった。

だけど――。


あたしは無言のまま、ストラップを元の位置へと戻した。

「あれ?買わないんだ?」

櫻井くんが肩から顔を覗かせる。

「あなたと来たなんて、言えないし」

あからさまな、嫌味。

一体どんな返事をしてくるだろうと、ゆっくり顔を動かして、彼の表情を確かめようとした。

すると、


「別に買えばいいじゃん。誰と来たかとか、何とでも誤魔化せるでしょ」

何てことのない顔をして、横から手を回し、一度戻したストラップを手に取った。


誰と来たか誤魔化せる……って。

「そんな簡単に言わないでよっ!」

あたしは思わず声を張り上げた。

すると、周りの人達がびっくりして、一瞬売店内が静まり返る。