恋を知らない人魚姫。




ショーを見終わったあたし達は、館内を続きから回った後、売店へと立ち寄った。


櫻井くんと水族館に来たなんて、誰にも言えることじゃなくて。

お土産を買う相手なんていないし、、自分になんてキャラでもなくて、ただ見ているだけだった。

……あるものを見つけるまでは。


「あ……」

歩きながら、ふと目に入ったもの。

それは、ピンクのイルカとブルーのイルカがそれぞれ付いた、ペアストラップ。

イルカが繋がれた先はビーズで出来ていて、とても綺麗で。

あたしは珍しく、引き寄せられるみたいに手にとってしまっていた。

すると、


「それ、俺とお揃いで付けたいの?」

「っ!?」

耳元をくすぐるように聞こえた声。

バッと振り返ると、あたしの真後ろに立った櫻井くんがニッと笑った。

「ちが……っ!」

すぐさま否定しようとするあたしに、

「愛ちゃんと、でしょ?」

“分かってるよ”とばかりに、彼は余裕のある笑顔で言った。