恋を知らない人魚姫。


間違っているから、そのうち息が出来なくなって。

きっと……死んでしまうんだ。


本当は自分が一番よく分かってるの。

でも……。


目を伏せて、ギュッとスカートを掴んだとき。


「……じゃあ、俺が居場所になってあげようか?」


隣から聞こえた声に、顔を上げる。


「は?」と小さく声を上げると、

「俺がなってあげるよ。月城さんの居場所」

櫻井くんはにっこりと微笑んで、そう言った。

「……」

あたしは数秒、口を半開きにしてポカンとする。

でも、すぐに我に返って、

「結構です」

はっきりと断った。


櫻井くんがあたしの居場所なんて、勘弁してほしい。

そんなの、とても耐えられない。
変な毒にやられて、今すぐ死んでしまいそうだ。


でも、だけど……。

……ううん、何でもない。


胸の奥で感じた違和感に、あたしは気付かないフリをした。