恋を知らない人魚姫。


目の前には、とても大きな建物。

立ち尽くすあたしの隣を通り過ぎていくのは、家族連れやカップルなど……年齢性別問わず、様々な人。


「水族館……?」


大きく表示された施設の名前を読んで、目をパチパチさせる。


「そ。夏だし、最初は海とか考えたんだけど、月城さん絶対泳いだりしないだろうな……って思って」

「……」

「名前に海って入ってるし、嫌いじゃないと思ったんだけど……もしかして、嫌だった?」

「う、ううん……」

何も考えず、素直に首を横に振った。


でも、そのすぐ後。

しまったと思ったのは、櫻井くんがフッと笑ったから。


「かっ、勘違いしないで!」

これじゃ来たかったって、言ってるみたい。

慌ててあたしが言葉を改めると、「ツンデレ?」と、櫻井くんは苦笑して。

「とりあえず行こう」

建物の方へと歩き出した。