「それ、そろそろ買い換えたら?」
あたしの行動を見ていた彼が、後ろから声をかける。
「う、ん……」
生返事しながら、あたしが考えていたのは、別のこと。
「……決まった」
「ん?」
「タイトル、決まった」
まだ何も考えていなかった、曲の名前。
イルカのストラップを見た瞬間、その言葉はとても自然に、頭の中に浮かんで来た。
「何てタイトル?」
問いかけられて、開きかけた口。
だけどあたしは、直前で答えるのをやめる。
そして、振り返って……微笑んだ。
「来週、水族館に連れて行ってくれたとき、教えてあげる」



