それはそうかもしれない、けど……。
それでもやっぱり恥ずかしい。

ムスッとした顔のまま、あたしが黙り込むと、「ごめんって」と謝りながら、くしゃくしゃと頭を撫でられた。

同い年なのに、たまに子ども扱い。
でも、嫌じゃないと思ってしまうあたしは……今日も彼のペースに巻き込まれる。

「どんな曲書いてんの?タイトルは?」

「まだ決まってない……」

答えた直後だった。

彼から机へと、視線を戻そうとしたあたしの目に、ある物が止まる。


それは……ケータイに付いた、イルカのストラップ。


手に取って、じっくり見てみると、塗装は剥げ、少し欠けてしまった部分もあって、随分とボロボロ。

それもそのはず。
だってこれは……高3の夏のあの日、拓也が買ってくれた、愛海とのペアストラップ。

あの時は、こんなに長く付けてるなんて、思いもしなかった。