情けないことに、今も手が震えて、スマホの入力が上手く出来ない。
自分自身を落ち着かせるために、片手を胸にあて、深呼吸する。
ドクン、ドクン。
音がする。
ドクン、ドクン……。
「あっ……!」
あたしは小さく声を上げ、思い出したように机に向かった。
突然、頭の中にフッ……と、過ぎったメロディ。
愛海への報告も後回しにして、それを口ずさみながら、ノートに残す。
「さっきから何してんの?」
後ろから問いかける声に、
「作曲」
あたしは一言だけで返した。
繋がる、繋がる、メロディ。
この曲は、きっと今しか書けない。
だってーー。
「……っ!?」
ひたすら夢中でペンを走らせていたあたしだったけど、感じた気配にパタンッ!と、勢い良くノートを閉じる。
振り返ってみれば、覗き込もうとばかりに、身を乗り出した拓也。
「さすが。耳良いね」
「勝手に見ないでよ!」
ムッと軽く彼を睨みつけると、「見たって俺、楽譜なんか良く分かんないよ」と、苦笑された。



