「ごめん。聞かせられるほど、まだ出来てないから」
「えー……」
あたしが断ると、つまんないとばかりに、頬を膨らます愛海。
そこに、注文を取りに店員さんがやって来て、少し助かった。
「……で、話って何?」
アイスティーを頼み終えた愛海に、早速本題を切り出す。
また作曲のことを蒸し返されたら嫌だから、ノートはさり気なくトートバッグに収めた。
「あ、うん……涼くんのことなんだけどね」
「うん」
LINEで話もしてたし、何となく内容は分かってた。
涼くんっていうのは、愛海が今気になっている人。
同じ専門の友達伝いに知り合った、同い年の大学生だそう。
何度かみんなで遊んで、連絡先も交換した……って、言ってたけど。
「今度、グループじゃなくて、個人的に遊びたいって、言われてね」
顔を赤らめ、小さくなる声。
この状況、知ってる。
嫌な予感がする……と、思っていると、
「いきなりふたりとか無理だから、海憂にもついてきて欲しいの!」
パンっと音を立て、愛海は顔の前で両手を合わせた。



