櫻井くんの指先が、そっとあたしの頬に触れる。
ゆっくりと、近付いていく顔と顔。
苦しいこと、逃げ出したくなること、数えきれないくらい沢山あった。
間違いも、沢山起こしてしまった。
でも、それは全てあたしに必要なことだったんだと思う。
愛海に恋したことも。
櫻井くんと付き合ったことも。
微かに触れ合った唇は、そのまま何度も何度も優しく重ねられて。
こうしていることが不思議で、信じられなくて。
でも……嬉しくて。
あたしの目から、一筋の涙が零れた。
全てはこの恋に気付くため。
本当の恋を……知るために。



