恋を知らない人魚姫。


……嘘つき。って、思うのに、声にならない。手に力が入らない。

失われていく、冷静。
体がただ熱くて。

気持ちがなきゃ嫌なのに、抱き締めてくれるなら、もう何だって、どうだっていいとか思い始めてしまう。

そんなあたしの耳元で、櫻井くんは再びため息をついて。

「急に好きとか言うの、ナシ。……心臓やばいから」

小さく、そう声を漏らした。


え……何それ?
心臓やばい……って、どういう意味?

分からなくて。だったら確かめてしまえと、彼の胸に耳をあててみる。

すると、

ドクンドクンと、大きな鼓動の音が聴こえて。

その音に、あたしの胸もドクンッ……と、大きく跳ね上がる。


「櫻井くん……」

ねぇ、分かんない。
これは、一体どういうこと……?

頭の中の整理がつかなくて、聴こえる鼓動にただただ戸惑っていると、

「初めはただの好奇心だったんだ」

あたしをきつく抱き締めたまま、櫻井くんから話し始めた。