「それ、マジで言ってんの?」
真っ直ぐあたしを見つめて、問いかけるその顔は……今までに見たことのない、表情。
「ん……」
声を上げようとするけど叶わない。
出来る返事はイエスかノーかの、二択だけ。
眉を寄せ、困惑したように見える表情に、素直になるのが怖くなる。
でも、今更後には引けない。
さっきよりも近付いた距離に、胸の奥が熱くて、もっと近付きたいと……思ってしまうから。
あたしはゆっくり、縦に頭を動かした。
すると櫻井くんは、横に振るとでも思っていたのか、目を見開いて、ものすごく驚いた顔をして。
ふっと緩まる、口を塞ぐ手の力。
隙間から空気が流れ込む。
櫻井くんはそのまま両手を膝につくと、「はぁー……」と声に出すほど大きく、ため息をついた。
「……」
その行動の意味が、あたしにはすぐ理解することが出来なくて。
だけど、片手で自分の髪をくしゃっと掴んだ彼を見て、ズキンと胸が痛んだ。



