恋を知らない人魚姫。


不必要に近い距離に、頭の中が沸騰しそう。

「っ、続きなんて別に……!」

気が動転して、また思っていることとは違うことを口にしそうになる……と、

「何か言いたげな顔してたじゃん」

櫻井くんはそう言って、苦笑した。


彼からしたら、多分何でもない会話。

だけど、あたしの胸はぎゅっと、掴まれるような思いになる。

「月城さんってさ、意外と顔に出やすいよね」

「っ……」

「愛ちゃんが好きなことも、見てすぐ分かったし」

うるさい。今更過去のことまで、掘り起こさないでよ。

つくづくムカつく人だと思う。

でも、それよりも、心の中で膨らむ気持ち。それはじんわりと温かくて……目と喉の奥が熱くなる。


嫌なことばっかり言われてる。

それなのにどうして、こんな気持ちに……。

自分自身に問いかけてみれば、答えはすぐに浮かんだ。


さっきの続き、話せって言うなら……話す。

ううん、ちゃんと話さなくちゃいけない。