恋を知らない人魚姫。



学校の玄関で靴を履き替え、階段を上がると、辿り着いた廊下の空気が、ざわついた。

色々と噂になって、学年中に知れ渡ってしまっていたから、無理もない。

みんな、仲良く一緒に登校してきたあたし達を見て、目を丸くしてる。

その様子に、ふたりして小さく笑ってから、

「変な誤解は解いておくね」

と、愛海が言った。

「別にいいよ」

こうして、仲直りしたんだという事実さえ知って貰えれば、それでいい。

それに、

「えー、もう一緒にいんじゃん」

「あの噂、本当だったの?」

「つまんなーい」

ヒソヒソと聞こえてくる、話し声。

あたし達に向けられた興味の目も、きっと時間の問題。

「でも、せめて身近だけでも、ちゃんとしておきたいから」

「ありがとう。ごめんね……」

「ううん。じゃあ次は、昼休憩……に、なるかな」

何気ない愛海の言葉に、頷いてしまいそうになりながら、あたしは直前で「あっ!」と、思い出したように声を上げた。