恋を知らない人魚姫。


「なんてね!海憂が元気ないから、いじわるしちゃった」

振り返った愛海は、笑ってペロッと舌を出した。

「も……もう、びっくりした」

ヒヤッとしたぶん、寿命が縮んだかもしれない。

「ごめん、ごめん。でも、自身持って大丈夫だよ!たっくんは絶対海憂のこと」

言いかけた、途中。
愛海の表情から笑顔が消えて、声も途切れた。

まさかーー。

思い浮かべた人物にドキッとして、振り返ろうとした……その時、


ショートカットの女の子が、あたし達の横を早足で通り過ぎた。


苗字も名前も覚えていないけど、ニックネームだけ覚えてしまった、“しーちゃん”。

あたしとは目が合うこともなかったけど、

「あー……睨まれちゃった」

愛海は肩を落として、苦笑した。

「大丈夫……?」

「うん。教室行くのがちょっとだけ、怖いけど」

「……」

それって、あたしのせい。
あたしなんかと仲直りしたから……。