恋を知らない人魚姫。



ひとしきり笑い終えると、愛海は繋いだ手の力を、心なしか強くして、


「仲直り……で、いい?」


か弱い声で聞いてきた。


この状況で「仲直りじゃない」とか、言うわけない。

それなのに、自信なさげな様子。


許してもらう自信がなくて、怖くて握り返せなかった手に、あたしはやっと力を込めた。

愛海も悩んでくれていたのが嬉しくて。
あたしを想ってくれていたのが、嬉しくて。

“もちろん”という言葉の代わりに、微笑んだ。


「ありがとう、海憂。大好きっ……!」

涙で瞳を潤ませながら、飛び付くみたいに勢いよく、抱きついてきた愛海。

その細い体に、あたしも軽く腕を回すけど、

複雑な気持ちには、もうならない。

『大好き』という言葉が、もう辛くない。