恋を知らない人魚姫。


「ごめっ……あたしの方こそごめんっ……」

ポロポロと流れ落ちる涙。
それを片手で拭いながら、あたしはひたすら謝る。

愛海は別に悪くないし、邪魔なんかしていない。

だって、愛海がいなかったら、あたしは彼に特別な感情なんて、抱かなかったと思うから。

邪魔をしていたのは、あたしの方。

自分の欲のために、愛海の好きになった人を奪って、裏切り続けていた。

お互いのしたことを天秤にかけたら、あたしの方がずっと重く沈む。

「ごめんねっ、ごめん……」

「もういいよ」

繰り返し謝るあたしを、愛海が止めようとする。

でも、足りない。
何度誤っても足りない。

“ごめん”よりもっと、深い謝罪の言葉があればいいのに。

ねぇ、この罪はどう償えばいい?

まるで、そんなあたしの心の声が聞こえたみたいに、

「じゃあ、クレープ奢ってくれる?」

愛海は小さく笑って、声をかけた。

「クレープ……?」

「そう。駅前のイチゴでアイス入りのやつ、奢ってくれるって約束してたでしょ? それと……チョコバナナクレープが食べたいなぁ」