恋を知らない人魚姫。


愛海に、同性の友達に、恋してしまった自分が、ずっとずっと嫌だった。

ちゃんと男の人を好きになれたら……って、何度も何度も思った。

でも、よりによって何であの人……。

嫌だ。認めたくない。
だって、あの人は愛海のーー。


どうしようもない罪悪感に襲われ俯くと、

「ごめんね」

あたしが言うべき言葉を、愛海が呟いた。

「好きって……言ってくれて、ありがとう。あの時はびっくりして、酷いこと言っちゃったけど、気持ちは嬉しかったよ。でもね……海憂があたしに抱いてる気持ちは、恋じゃない。図書室でふたりを見たとき、はっきり分かったよ?」

顔を上げると、愛海は微笑んでくれて。

それだけで胸がいっぱいになって、息が詰まる……のに、


「ふたりの邪魔を、あたしがずっとしてた。ごめん……本当にごめんなさい」


ふわふわの髪が流れる。

向けられたつむじ。
深く下げられた頭に、

あたしは精一杯、頭をかき乱すみたいに、首を横に振った。