「ホントウザイんですけどぉー」

少し距離が開くと、すぐに聞こえてきた悪口。

「災難だねぇー」と苦笑する周りの声が聞こえて、あたしはその声に背を向けるように教室を出た。


傷付くとか、そういう気持ちにはならないけど、疲れる。

女子って本当に面倒くさい。

思いながら向かった先は、愛海の教室。


どのクラスでも、嫌われているのは同じで。あたしが中を覗き込むと、ほんの少し空気がザワッとした。

でも、そんなこと気にならない。
それよりも――。


……え。


教室の中にあった光景に、目を奪われた。

優しい午後の陽の光が入り込む、窓際の席。

その席に座る櫻井くんと、その前に立った愛海。

ふたりはとても柔らかな笑顔を浮かべて、話していた。


その姿はまるで――。