恋を知らない人魚姫。


ちくん、と胸が痛む。

愛海が本当に櫻井くんを好きだったこと。それは、誰よりも近くで見ていて知っていたはずなのに、何を今更期待してしまっていたんだろう。

こんな馬鹿な質問をしてしまったことが、恥ずかしい。


「今、ちょっとショック受けてる?」

「えっ、何で!?」

愛海に見抜かれてドキッとしたあたしは、思わず顔を赤くする。すると、

「大丈夫だよ。たっくんは海憂しか見てないから」

そう言って、苦笑された。

「……」

ちょっと待って。
それって何だか違う気がする。っていうか……。

櫻井くんが、あたししか見てないって?

そもそも、さっきの愛海の発言。

「ね、ちょっとごめん。櫻井くんが……誰を好きだって言った?」

「だから、海憂を」

……あたし?

櫻井くんがあたしを……好き?

「何かおかしなこと言ってるかな?」

あたしの顔を見つめ、不思議そうに首を傾げる愛海。

不思議なのは、こっち。