相変わらず櫻井くんは、見せつけるかのように愛海と親しげに話していて。

それがあたしに対する嫌がらせだと、気付くのは簡単で。


彼があたしと付き合っている理由は、きっとその行動そのもの。

嫌がらせして、楽しんでいる他ない。


だから、ふたりっきりでデートとか、普通のカップルのような出来事は起こるはずもなく。

あたしはただ、嫌がらせに耐えながら、愛海を失わないようにするだけ……。

いつまで続くのかは分からないけど、彼が飽きてくれるまで、今の状況を我慢しようと思っていた。

多分それは、今日も……。


小さくため息をつきながら、図書室へと向かうため、席を立った時だった。


「月城さんっ!」

突然呼ばれた名前。

声の方を見ると、廊下から教室へ戻ってきたばかりといった女子が、ツカツカとこっちに向かって歩いて来ていた。