これでいいの。これで。 愛海の抱えていたノートが何の教科なのか、あたしは知らなくて。 愛海も、あたしが職員室に来ていた理由を知らない。 こんな風に、お互い知らないことが少しずつ増えていって、やがてまた赤の他人に戻る。 全部、全部巻き戻して、愛海の頭からあたしのことなんて、消え去ってしまえばいい。 こんなこと、あたしが思うのは変だけど……もう悲しませたくないから。 悲しい顔をさせてしまっているのは、あたしだから。