「ねぇ、いいじゃん月城さん。ねぇ……無視すんなって!」
階段を降りようとしていた、その途中。
後ろから追いかけてきた男子が目の前に立ちはだかって、あたしは眉を寄せる。
「だから、あたし……」
「櫻井とは別れたんでしょ? だったらいいじゃん。俺と付き合ってよ」
言葉を遮られ、告げられた内容にため息を吐く。
何度言えば分かるんだろう……。
「あたし、あなたに興味ないから。先生に呼ばれてるから、そこどいて」
階段の段差のせいで、同じくらいの高さになった目線。
真っ直ぐ見つめ、ハッキリ言うと、その男子は少したじろいで。
その隙に横を通り過ぎる。
「やっぱ、友達の彼氏とかじゃねーと、そそられねーの?」
しぶとく声だけが、上から追いかけてきた。
……何それ。
心の中で呟いて、相手に見えない眉をさらに寄せて、あたしはそのまま無視して、階段を降りた。