そして、あんな風に顔を近くにして言われたら、

可哀想な人魚姫は、あたしのことみたい。


人魚姫を助ける。

あたしを……助ける。

それは何から?……って、考えたとき。

ずっと分からなかった答えが見えそうになって、あたしは思わず目を逸らした。


そんなことない。そんなわけないと、必死に心の中で首を横に振る。

それなのに大きくなる、胸のざわつき。

気付いちゃダメ。
気付いちゃいけない。

だって、そんなの……。


膝を抱える腕の力が、自然と強くなる。

そんなあたしの行動と同じくらいのタイミングで、チャイムが鳴った。

あと5分で休憩が終わることを伝える、予鈴の音。

それに忠実に立ち上がった櫻井くんは、「んー」と声を発しながら、伸びをした後に、

「じゃあ、俺もひとつ聞いていい?」

未だ座ったままのあたしに、上から声をかけた。