大嫌いだった……はずの人。
なのに今、こうして隣にいてくれることに、感謝してる。
慰めてくれているのか、何なのか分からないけど、撫でてくれる手のひらが嬉しくて、安心出来て。
……変、変なの。
櫻井くんもまた、あたしのことが嫌いだったと思うのに。
「ねぇ、最後に聞いてみてもいい?」
納得のいく答えなんて、貰うことが出来ないと知りながら、駄目元であたしはもう一度、問いかけてみた。
「一体何が目的だったの?」
櫻井くんが、あたしに近付いた理由。
あたしと付き合った理由。
これだけは、どれだけ思考を巡らせてみても、分からなかった。
愛海を好きだったわけでもなければ、あたしをただ単にからかって遊んでいたわけでもなさそうで。
彼の身勝手な行動に散々振り回され、沢山傷付けられたけど、
そのくせたまに優しくしたりするから……本当の気持ちが見えないまま。
「目的?」
軽く開かれる彼の口。
期待はしていないつもりなのに、緊張して息を飲む。



