「嘘ついたら針千本飲ーますっ、指きった!」
小指は愛海の声に合わせて揺らされ、歌の終わりと同時にパッと離された。
満足そうに微笑む愛海。
合わせるように微笑を浮かべながら、気持ちは複雑だった。
あたしが好きなのは……愛海で。
この感情がおかしいことなんて、分かってて。
愛海をとられたくないから櫻井くんと付き合うなんて、どうかしてるって自分でも思う。
それでも……。
本棚と本棚の間。
気付けば、櫻井くんが立っていた。
あたしと目が合った瞬間、彼はフッと笑って。
多分、指切りを見ていた。
その目は、『そんな約束しちゃっていいの?』と、言っていて。
あたしは無言のまま、彼を静かに睨んだ。
だって、あたしがあなたを好きになることなんて、ないから。
付き合っていても、気持ちはこれっぽっちもないから。
だから、約束を破ることもないでしょう……?
そんな屁理屈を、頭の中で並べて。



