恋を知らない人魚姫。


「うん? それじゃ何か不都合?」

キョトンとして、あたしを見る櫻井くんの表情に、ぐっ……と口を閉じる。

そして、パッと顔を逸らした。

不都合?……って、
不都合すぎる。

せっかく塗り固めていた心の外側が、ポロポロと崩されていく。

「やめてよ……」

何でそんなこと言うの。

心配なんかしないで。
優しくなんかしないで。

せっかく強がろうとしていたのに、本心が顔を出してしまう。

愛海に嫌われても、愛海が傍にいなくても、大丈夫って思おうとしていたのに、

“悲しい”とか、“寂しい”とか、胸の内の本心が溢れ出して、声を上げる。

それから、もうひとつ……。


締めつけられるみたいに苦しい胸の奥と、熱くなる目頭。

何とか堪えようと、唇をきゅっと噛んだ時だった。


伸ばされた櫻井くんの手が、あたしの頭に触れて。

ポンポン……と、優しく撫でた。