恋を知らない人魚姫。


驚いたような、困ったような顔をするのは、こっち。

それだけでなく、

「飛び降りたりするんじゃないかと思って」

彼は更に、あたしを戸惑わせることを言った。


心の余裕が一気になくなる。

胸の奥がきゅうっと締めつけられる。

「そんなこと……しない」

だって、あたしが飛び降りたりしたら、困るのは愛海だから。
傷付くのは、苦い思いをするのは、間違いなく愛海。

だから、絶対にそんなことしない。

……でも。

昨日なら、分からなかった。

本当に消えていなくなってしまいたいと思うほど、辛かったから。

……彼に抱きしめられて『大丈夫』と、言われるまでは。


「なら、良かった」

静かに落とされた言葉。

こういう時こそ、余計な一言を付け足してくれればいいのに、それだけで。

「これじゃ、本当にあたしを心配して来たことになるけど」

否定して欲しくて、わざと自ら口にした言葉も無意味。