恋を知らない人魚姫。


心配なんて、した方が馬鹿だった。

だって、この人はこういう人で。
今回のことだって、自業自得と言ってもおかしくない。

それなのに、“最低”だと思うのに、

心の底から恨むことが出来ないのは……


「でもさ、月城さんは大丈夫じゃないでしょ?」


彼が本当は優しいことを、知ってしまったから。


何で、そんなこと言うかな……。

胸の奥がじわっと熱くなって、
喉に、目に、上がって来る。

「……そんなことない。意外と大丈夫」

今のあたしの感情を知られたくなくて、必死に冷静を装って返事した。

そして、

「心配してくれるの?」

悔しいから、さっきのお返し。

笑みを浮かべて、わざと同じことを問いかけた。

頭の中で想像したのは、少し驚いたようで、困った顔で、はっきりしない返事。

だけど櫻井くんは、

「うん」

実にあっさりと頷いた。