恋を知らない人魚姫。


「そう……。じゃあ準備出来たら、降りてらっしゃい」

気になっていないわけがない。
でも、深く聞いてこないのは、きっとお母さんの優しさ。

テンプレートみたいな言葉を残して、パタンと静かに閉められたドアに、ただただ温かな気持ちになった。

こんなあたしでも、心配してくれる人がまだ残ってる……。

そう思ったら、急に陽の光を浴びたくなって。ベッドから立ち上がって、カーテンを開けてみた。

すると、そこに広がっていたのは、これでもかっていうくらいの青空。

ずっと暗がりにいたあたしには眩しすぎて、思わず目を細めた。


誰が言ったか知らないけど、明けない夜はないなんて、よく言ったもの。

どんなに辛いことがあっても、悩んでも、そんなのお構いなしに、朝はいつも通り平等にやって来て。

あたしは今日も、何が起こるか分からない1日を過ごさなきゃいけない。

現実と向き合わなきゃいけない。

それはとても怖いけど……。


「……大丈夫」

やっと慣れてきた目で、空を見つめながら呟いた。