恋を知らない人魚姫。


コンコン。

誰かが部屋のドアをノックした。

「海憂、起きてる?」

言いながら、返事もしてないのにドアを開ける人。

それは、お母さん。

「大丈夫?学校行ける?」

寝たままのあたしと目を合わせたお母さんは、心配そうに声をかけた。


昨日家に帰ってからのことは、あまり覚えていない。

ただ、尋常じゃないほどに泣いてしまっていたから、すぐ自分の部屋に飛び込んだ。

泣き腫らした顔、見られないようにしたつもりだけど、やっぱり気付かれてしまってたのかな……。

普段なら、“放っておいてよ”とかって思うのに、今日は心にしみる気がした。

心配してくれるのが……嬉しい。

ひとりじゃないって思えるのが、嬉しい。


「大丈夫。行く」

本当は行きたくないけど。

ここで休んでしまったら、もうずっと行けなくなってしまう気がするから。
あと、あまり心配かけたくないから。

あたしは重い体を起こした。