恋を知らない人魚姫。


……いや、違う。

これは、あたしが振り払った感触なんかじゃない。


目を覚ましておきながら、曖昧だった夢と現実の境目。

ポッカリ記憶が抜け落ちたように、一時的に忘れていた現実が、頭の中に一気に舞い戻る。


『触らないで……気持ち悪い』


そうだ。この感触は、愛海があたしの手をはたいた時のもの……。

拒まれてしまったのは、あたしの方。

思い出したら、胸の奥がきゅうっと苦しくなって。

ストンと、手をベッドの上に落とす。


本当はクリーム色。
だけど、閉められたカーテンのせいで、灰色に見える天井。

その色はまるで、あたしの心の中みたいだと思った。

陽の光を遮られ、じめじめとした暗い色。

でも、救いようがないくらい暗いわけではない。
ほんの少し、光が差し込みそうな……。

……光?

それって何?と、思った時だった。